目次
「最近めまいや、動悸や、息切れをするようになった」
「疲れやすく、周りからも顔色が悪いと言われる」
「爪が割れやすい、髪が抜けやすい、肌荒れがひどい」
このような症状でお悩みの方は、もしかしたら「貧血」かもしれません。
特に女性に多い貧血は、更年期障害と症状が似ていることもあり、見過ごされがちです。
貧血を放置すると生活の質が低下するだけでなく、心臓などに負担をかけることもあります。
この記事では、貧血の基本的な知識から症状、原因、予防法までを医師が詳しく解説します。気になる症状がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
当院では、今症状がある方はもちろん、この先の不安や、過ごし方に迷う方も、当院でゆっくりと話して、少しでも安心を得ていただけるよう気軽になんでも相談していただける雰囲気づくりを心がけております。 【板橋区】前野町つばめクリニック院長 |
そもそも貧血とは?
貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンが不足し、体内に酸素を十分に供給できなくなる状態です。
赤血球は、酸素を全身に運ぶ役割を果たす重要な細胞です。赤血球が減少する原因として、鉄分不足や慢性的な出血、栄養バランスの偏りなどが挙げられます。
貧血は軽度の段階では自覚症状が少なく、疲れやすさや軽い倦怠感として現れることが多いです。
しかし、進行すると日常生活に支障をきたすほどの症状が出る場合があります。そのため、早期発見と適切な治療が大切です。
貧血の症状
貧血の症状は非常に多岐にわたり、日常生活に大きな影響を与えることがあります。ここでは代表的な症状を詳しく解説します。
全身症状
貧血で最も多く見られるのが「疲労感」と「倦怠感」です。
血液中の赤血球が酸素を十分に供給できなくなるため、全身がエネルギー不足のような状態になります。
軽度の場合は、少し疲れやすいと感じる程度ですが、重度になると階段を上るだけで息が切れる、日常の家事すら難しいといった状態に陥ります。
また、「朝起きた瞬間から疲れている」という感覚を訴える方も少なくありません。
・更年期の症状との違い
貧血の代表的な症状である「疲れやすさ」や「倦怠感」は、更年期の不調でもよく見られます。
しかし、貧血の場合、この疲労感は運動や階段の上り下りなどの動作を行った直後に強く現れる傾向があります。
一方、更年期の疲労感は、ホルモンバランスの乱れによる慢性的なだるさが特徴で、時間帯に関係なく感じる場合が多いです。
心臓や呼吸への影響
貧血が進行すると、心臓や呼吸器に負担がかかり、「動悸」や「息切れ」が起こります。
これは、体が不足した酸素を補うために心臓の拍動を速めることや、呼吸を深くすることで酸素を取り込もうとするためです。
特に運動時や階段の上り下り、重い荷物を持つといった動作でこれらの症状が顕著に現れます。
・更年期の症状との違い
「動悸」や「息切れ」は、更年期のホルモン変動による動悸とも似ていますが、運動や少しの負荷で頻繁に起こる場合は貧血の可能性が高いです。
一方、更年期の動悸は、安静時や特に夜間に現れることが多く、ホットフラッシュ(突然の熱感)を伴うことがあります。
外見の変化
貧血の方は「顔色が悪い」と指摘されることが多く、これは皮膚や粘膜に十分な血流が行き渡らないためです。
特に、目の結膜(まぶたの内側)が白っぽくなることが特徴的です。
また、爪が薄く割れやすくなる、反り返った形(スプーンネイル)になることもあります。
これらは、鉄分が不足することで爪の成長に必要な栄養が不足するためです。髪の毛も同様に、抜け毛や乾燥、パサつきが増えることがあります。
・更年期の症状との違い
更年期でも疲労によって顔色がくすむことがありますが、目の結膜の白さや、爪が薄く割れやすくなる「スプーンネイル」は貧血特有の症状です。
また、髪のパサつきや抜け毛はどちらにも共通する症状ですが、貧血によるものは栄養不足が原因であることが多く、更年期のホルモン変化とは異なります。
精神的・認知的な影響
“酸素不足は脳にも影響を与えます。その結果、「集中力が低下する」、「物忘れが増える」といった症状が現れることがあります。
仕事や家事に集中できない、簡単な作業でミスが増えるといった困りごとにつながります。
また、不安感やイライラ感、抑うつ感といった精神的な症状も見られるため、「精神的な問題」と誤解されることもあります。
・更年期の症状との違い
更年期では不安感やイライラ、うつ症状が目立つため、精神面での不調がより顕著になります。
その他の症状
舌の表面がツルツルになり、食べ物を食べた際にしみるような「舌炎」や、「口角炎」と呼ばれる口の端が切れる症状が出ることもあります。
さらに、重度の貧血では、食欲の低下や体重の減少を訴える方もいます。
更年期ではこれらの症状は一般的ではありません。また、重度の貧血では胃腸の不調や食欲不振が見られる場合がありますが、更年期ではむしろ体重増加を訴えるケースが多いです。
貧血と更年期は症状が似ているため、自己判断では見分けが難しい場合があります。特に「疲れやすさ」や「動悸」などが続く場合、医療機関で血液検査を受けることをおすすめします。
貧血の原因とは?
貧血の原因は、単なる鉄分不足だけではありません。体内のさまざまな仕組みが影響し、複合的な要因で引き起こされます。ここでは代表的な原因を詳しく解説します。
鉄欠乏性貧血
貧血の中で最も多い原因が「鉄欠乏性貧血」です。
赤血球の主成分であるヘモグロビンは、鉄分を材料に作られます。鉄分が不足すると、赤血球が十分に生成されず、貧血を引き起こします。
鉄分不足の主な原因は以下です。
・月経や出産
特に女性は月経で定期的に血液を失うため、鉄分不足になりやすい傾向があります。過多月経の場合、そのリスクはさらに高まります。妊娠中も胎児に栄養を供給するため、鉄分の需要が大幅に増加します。
・食事の偏り
鉄分を多く含む食品(赤身の肉、レバー、ほうれん草など)を摂取していない場合、鉄欠乏に陥る可能性が高くなります。特に菜食主義の方は、動物性食品に含まれる吸収率の高いヘム鉄を摂取できないため、注意が必要です。
慢性的な出血
胃や腸の消化器系の疾患(胃潰瘍、十二指腸潰瘍、ポリープ、がんなど)による慢性的な出血は、体内の鉄分を消耗させ、貧血の原因となります。
また、痔や大腸の病気が原因で知らないうちに出血が続いている場合もあります。このため、定期的な健康診断が重要です。
栄養素の不足
赤血球を作るためには、鉄分だけでなく、ビタミンB12や葉酸も必要です。
これらが不足すると、「巨赤芽球性貧血」と呼ばれる特殊な貧血を引き起こします。
ビタミンB12は肉や魚に多く含まれていますが、胃の粘膜が弱っていると吸収がうまくいかなくなることがあります。
慢性疾患による貧血
慢性的な炎症や腎臓病、がんなどの病気が原因で赤血球の生成が抑えられることがあります。
これを「慢性疾患による貧血」と呼びます。特に腎臓病では、赤血球の生成を促すホルモン(エリスロポエチン)が減少するため、貧血が進行しやすくなります。
その他の原因
遺伝的な要因による貧血(サラセミアや鎌状赤血球症など)や、自己免疫疾患による赤血球の破壊も原因となります。これらのケースでは専門医による診断が必要です。
注意点として、これらの原因が複合的に絡むことも多く、表面的な症状だけでは判断できない場合があります。
症状が長引く、または悪化していると感じたら、必ず専門医に相談してください。
貧血の予防方法
貧血を予防するためには、以下のポイントを意識しましょう。
鉄分を含む食品を摂取する
レバーや赤身の肉、ほうれん草、大豆製品など鉄分を多く含む食品を積極的に取り入れましょう。動物性食品に含まれる鉄分(ヘム鉄)は吸収率が高いため特におすすめです。
ビタミンCを組み合わせる
ビタミンCは鉄分の吸収を助ける役割を果たします。野菜や果物(特に柑橘類)を食事に加えると効果的です。
バランスの良い食生活を心がける
鉄分以外にもビタミンB12や葉酸を摂取できるよう、魚介類、乳製品、緑黄色野菜を取り入れたバランスの良い食事を意識しましょう。
過度なダイエットを控える
無理な食事制限は、栄養素の不足につながります。健康的な体を維持するために適度な食事量を保ちましょう。
定期検診を受ける
特に症状がある場合は、早めに内科を受診し、必要な検査や治療を受けましょう。
前野町つばめクリニックでの貧血の診断
上記の通り、貧血の症状は多岐に渡り、健診でたまたま指摘されたり、症状を訴えない方も中にはいらっしゃいます。
貧血の有無は血液検査で比較的簡便に分かりますので、問診・診察の上必要な方には採血を提案させていただきます。
重要なのは、貧血に至った原因です。単純な栄養不足からの鉄欠乏貧血だと思ったら、実は悪性腫瘍が隠れていた、などのケースは多々ありますので、注意が必要です。
そういった見落としが無いように、特に問診は詳しく聞かせていただきます。関係ないと思う症状でも、気になることがあればお伝えください。
また貧血がない場合も、他の疾患で症状が出現している可能性もありますので、血液検査で異常が見つからない際も追加の診察や検査をさせていただくことがあります。
前野町つばめクリニックでの貧血の治療
同じ貧血でも、原因や進行速度によって治療法が変わることがあります。
最も危険な急激に症状が進行する重度な貧血の場合は輸血が必要になります。輸血が必要な際は、近隣医療機関を速やかに紹介させていただきます。
内視鏡や画像検査などが必要な際も他施設を紹介させていただくことがあります。
投薬が必要な際は、初期の副作用に注意しつつ開始し、当院で症状とデータの変化を注意深くフォローアップさせていただきます。
無事に改善した後も、今後の生活習慣や注意すべきポイントなどを説明させていただき、いつでも相談できる体制を用意しています。
前野町つばめクリニックの治療方針
貧血は誰にでも起こり得るもので、原因も対応も様々です。
思っても見ない症状・所見から貧血の診断に至ることも往々にしてあります。
体調の不安をお抱えで、貧血かもしれないと思う方は、いつでもお気軽にご相談ください。
まずは話をゆっくりと聞いて、一人ひとりに最適な対応を提案させていただきます。
前野町つばめクリニックは一番身近な医療の入口として、地域の皆様のお役に立ちたいと考えています。
この記事の筆者 |
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前野町つばめクリニック 院長 佐々 達郎 東京大学医学部大学院医学系研究科 内科学 博士課程修了 |