「咳が止まらない」「呼吸が苦しい」といった症状は、多くの方が経験することです。
特に長引く咳や息苦しさは、日常生活に大きな影響を及ぼし、不安を感じる原因にもなります。
これらの症状の背景には、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)といった病気が隠れているかもしれません。
喘息・COPDの症状とセルフチェック
咳や息苦しさ、息切れといった症状は、風邪と似ているため見過ごされがちです。
しかし、これらの症状が長引いたり、特定の条件下で悪化する場合は注意が必要です。
ここでは、喘息とCOPDそれぞれの特徴的な症状と、ご自身でできる簡単なセルフチェック項目をご紹介します。
喘息の症状
喘息は、気道(空気の通り道)が狭くなることで、発作的に咳や息苦しさが起こる病気です。
主な症状は、突然の激しい咳や、空気がうまく吸えない・吐き出せないといった息苦しさです。
この時、呼吸をするたびに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった独特の音が聞こえることがあります。この音は「喘鳴(ぜんめい)」と呼ばれ、喘息の代表的な症状の一つです。
また、喘息の症状は、夜間や明け方、季節の変わり目に悪化しやすい傾向があります。ハウスダストや花粉、ペットの毛などのアレルギー物質が原因となることが多く、風邪やストレス、激しい運動などをきっかけに発作が引き起こされることもあります。
ご自身でセルフチェックをする際は、以下の点を振り返ってみましょう。
チェックがつく場合は、まずは当院までご相談ください。
・理由もなく咳が続くことはありませんか?
・呼吸をするたびに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音が聞こえますか?
・家族にアレルギーや喘息の人がいますか?
・夜間や明け方に咳で目が覚めることはありませんか?
COPDの症状
COPDは、タバコの煙などが原因で肺の組織がゆっくりと破壊されていく病気です。
喘息とは異なり、長期にわたって咳や痰が続くのが特徴です。初期は自覚症状が少ないことが多いですが、病気が進行すると少しの運動でも息切れを感じるようになります。特に階段を上る時や坂道を歩く時など、体を動かした時に息苦しさを感じやすくなります。
COPDの最大の原因は喫煙です。そのため、長年の喫煙歴がある方は特に注意が必要です。
ご自身の症状がCOPDに当てはまるか、以下の項目で確認してみましょう。
・長年にわたり、咳や痰が続いていませんか?
・喫煙の習慣がありますか?
・同年代の人と比べて、歩いたり階段を上ったりする時に息切れを感じやすくなっていませんか?
・少し動くだけで呼吸が苦しくなることはありませんか?
喘息とCOPDの違い
喘息とCOPDは、どちらも呼吸器の病気であり、咳や息苦しさといった似たような症状が現れますが、その病態や原因、治療法は大きく異なります。この違いを理解することが、適切な診断と治療に繋がります。
喘息:気道が狭くなる病気
喘息は、気道が一時的に狭くなる病気です。アレルギー体質の方が発症することが多く、ハウスダストや花粉、ダニなどのアレルギー物質が引き金となり、気道に炎症が起こります。この炎症により気道が過敏になり、少しの刺激で気道が収縮し、呼吸が苦しくなります。発作は一時的で、適切な治療により症状は改善します。喘息の治療では、気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬が中心となり、症状の予防や発作のコントロールを目指します。
COPD:肺の組織が壊れる病気
一方、COPDは、肺の組織が壊れていく病気です。タバコの煙や大気汚染物質などを長期間にわたって吸い込むことで、肺の奥にある小さな袋(肺胞)が破壊され、空気をうまく取り込むことができなくなります。一度壊れた肺の組織は元に戻らないため、病気が進行すると常に息苦しさを感じるようになります。COPDの治療では、症状を緩和するための吸入薬や、病気の進行を遅らせるための禁煙指導が不可欠です。
当院の検査と治療方針
咳や息切れ、息苦しさといった症状が続く場合は、自己判断せず、専門の医療機関を受診することが大切です。当院では、患者様一人ひとりの症状を詳しくお伺いし、適切な検査を行うことで、正確な診断と最適な治療方針をご提案します。
検査の流れ
まずは問診で、咳が続く期間や症状の出方、喫煙歴や家族の病歴などを詳しくお聞きします。
特に喫煙歴はCOPDの診断において非常に重要な情報です。次に、必要に応じて以下の検査を行います。
・呼吸機能検査(スパイロメトリー)
スパイロメトリーは、息を吸ったり吐いたりする力を測定する検査です。この検査により、肺の空気の出し入れの能力を数値化し、気道の狭窄(きょうさく)の有無や肺の機能低下の程度を客観的に評価できます。この結果は、喘息やCOPDの診断に役立ちます。
・レントゲン検査
胸部のレントゲン撮影を行い、肺の状態を確認します。COPDでは、肺が過剰に膨張する「肺気腫(はいきしゅ)」が認められることがあり、喘息では、合併症や他の病気がないかを確認するために行われます。
・血液検査
アレルギー検査、免疫系の検査を行うために、必要に応じて、血液検査を実施させていただきます。
治療方針
診断の結果、喘息またはCOPDと診断された場合、それぞれの病態に合わせた治療計画を立てます。
喘息の治療
喘息の治療は、気道の炎症を抑えるための吸入ステロイド薬が中心となります。この薬は、症状がない時でも毎日継続して使用することで、発作が起こりにくい状態を維持することができます。また、発作が起きた時には、気道を広げる吸入薬を使用する対処法も指導します。さらに、吸入薬は正しく使用しないと効果が十分に発揮されないため、当院では患者様が吸入薬を正しく使えるよう丁寧に指導します。
COPDの治療
COPDの治療において最も重要なのは禁煙です。喫煙を続ける限り、病気は進行してしまいます。当院では、禁煙をサポートするための指導や、ニコチン置換療法などのご相談にも応じます。また、吸入薬による症状の緩和も行います。病状が進行し、酸素が足りなくなった場合には、在宅酸素療法の導入を検討することもあります。
当院では、患者様一人ひとりの生活習慣や症状の重さに合わせて、最も効果的で継続しやすい治療計画を立てることを重視しています。
喘息(気管支喘息・COPD)についてよくある質問(FAQ)
Q: 喘息は治りますか?
A:喘息は、適切な治療を継続することで、発作がほとんど起こらない状態を維持できます。しかし、アレルギー体質が根本的に治るわけではないため、治療を自己判断で中断すると症状が再発することがあります。医師の指示に従って、治療を継続することが重要です。
Q: 喘息は子供の病気ではないのですか?
A:喘息は子供に多い病気ですが、大人になってから発症することも珍しくありません。子供の頃に喘息と診断された方が、一度症状が治まった後に大人になってから再発することもあります。
Q: 喫煙者ですが、COPDの検査はできますか?
A:はい、喫煙歴のある方はCOPDのリスクが高いため、積極的に検査をお勧めしています。問診で喫煙歴をお聞きし、必要に応じて呼吸機能検査を行います。少しでも気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。
Q: 吸入薬を正しく使う自信がありません。
A:吸入薬は、使い方に慣れていないと難しく感じることがあります。当院では、患者様一人ひとりに合わせて、実際に薬の模型などを使って正しい使い方を丁寧に指導します。ご自宅で練習できるように、吸入薬の使い方をまとめたパンフレットをお渡しすることも可能ですので、安心してご相談ください。
Q:喘息の治療はずっと続けないといけないですか?
A:喘息は、ある程度時間をかけて治療を行い、症状が改善してきた際には服薬量の減量または終了を目指していく病気、治療になります。
それは1週間や1ヶ月ではなく、数ヶ月または数年かけて行うことが一般的です。
